志村 陽子 / Yoko SHIMURA
ーとけあう森ー
すべての境界は、やがて溶け合う。
白く透ける葉脈は、森の呼吸を可視化したかのように宙を漂い
光に満ちた空間全体を静かに包み込む。
散らばる白い蕾は、芽吹きの予兆であり、未だ姿を定めない可能性のかたち。
銅に覆われた昆虫や植物は、失われた生命を異なる物質へと変換し
過去の時間を新たな層としてここにとどめる。
「とけあう森」は、生成と消滅、自然と人工、過去と未来が混じり合い
境界はほどけ、曖昧さそのものがひとつの風景をつくりだす。
訪れる人はその中で
自らの存在までも、ひとつの森の気配として溶け込ませるだろう。